ダイエーレコード店長
昭和47年創業のアナログレコード店のオーナーです。ソウル、ブルース、ゴスペルが好きで夜な夜な好きなレコードを聴いています。プライベートでは、ブルースバンドのVoで活動もしております。
ジャコ・パストリアスとは・・
DAIEIRECORD店長の「酩酊談話室」
アメリカ合衆国のジャズとフュージョンのエレクトリックベース奏者、作編曲家。1970年代半ばに頭角を現し、1975年にはパット・メセニーの初リーダー作に参加、翌1976年にはファースト・ソロ・アルバム『ジャコ・パストリアスの肖像』を発表すると共にウェザー・リポートにベーシストとして参加。革新的なテクニックを持ち、エレクトリック・ベースの中でも少数派であるフレットレス・ベースを用いて、アンサンブルでの花形楽器にまで昇華させたことで知られるお方。兎に角、天才的なベーシスト、作曲家やプロデューサーで多彩な才能をもった人でした。
ジャコパストリアスの生涯
先日、古本屋で「ジャコ・パストリアスの肖像」(ビルミルコウスキー著)を見つけ なんだか面白そうなので購入!一気に読んでしまった。少しだけ、ジャコ・パストリアスという奇才の謎が解けたような気がした。ジャコ・パストリアスって、ベースという楽器の概念を底からひっくり返した人で、一躍その名を世界に知らしめた人なんです。
しかし、彼は、躁鬱病を患っており、その上、「酒」、「ドラッグ」(コカイン)が、その症状をより酷いものにして、手が付けられない状況になり、最終的には、アパートを追い出され、路上生活者になり、最後は深夜バーの用心棒に、殴り殺されてしまうという悲惨な最後を遂げてしまうのです。
ジャコのプレイヤーとしての凄さ
そんな35年の生涯を遂げた彼ですが、ベースを弾かせればめちゃくちゃ凄かったわけです!
一応、ジャズベーシストというくくりになっていますが、そんな簡単ではない!!
時にジミー・ヘンドリックスのように、ワイルドに音を歪ませて弾いて(それも爆音で)ベースを放りなげたり、アンプから飛んでベースを踏みつけて音を鳴らすパフォーマンスをしたりして、パンク野郎の一面をみせつける。一方ジョニミッチェルのアルバムでは、心に染み入るような、非常に繊細なベースを弾く・・・ と思いきや、ウェイン・コクラン&C・C・ライダース時代のような、ごきげんな「R&BFunk」を弾いている時が、最高にかっこ良かったりする。
まあ、ここまでなら、ベースプレイヤーという範囲で納得がいくのですが、彼が偉大なコンポーザーであり、アレンジャーでもあるという事に驚くのだ。
当店で販売している音源を聴いてみた
今回は、ベースプレイヤーとしてよりも「コンポーザー」「アレンジャー」として評価されたジャコの2枚目の(最後のリーダーアルバムでもある)「Word Of Mouth」をご紹介致します。
そのまえに・・・
話は、ウェイン・コクラン&C・C・ライダース時代に遡るが、若い頃、ジャコは音楽的な知識がなく、譜面も読めなかった。
バンドリーダーである、チャーリー・ブレンドに読譜とコード・ヴォイシングの方法を教わり、相手が嫌気をさすほど、徹底的な質問攻の後、3日間の休みの間に、バンドの11のホーンのためのヴォイシングを書いてしまった。
それが「Amelia」という曲だ。
ついこの前まで譜面も読めなかった男が、たった3日の間に作ってしまったという事でバンドのメンバーはとても驚いた。
そりゃそうだ・・・(笑)
そのジャコが次にC・C・ライダース用に手掛けたのが ジェイムス・ブラウンの「The Chicken」のアレンジ!!
これが又かっこいいのだわ・・
とにかく、まるで同じ人間がやる事かと疑うくらい、音楽的にも私生活においても、その振れ幅は尋常ではなかったわけです。
それでは、[Word Of Mouth」の紹介に戻ります。
A-1曲目「Crisis」
A面の1曲目「Crisis」これ問題作なのだが、ベースラインをまず録音して、そのベースラインだけを聴かせて、ジャック・ディジョネット、マイケル・ブレッカー、ハービー・ハンコック、ドン・アライアス、ボビー・トーマス、ピーター・アースキン、ウェイン・ショーター、ヒューバート・ロウズ、らのオーバーダブをしたのだ。それぞれ、ひとりひとりやって来て、同じベースラインだけを聴きながら、それにオーバーダブをしていく作業をしていました。
例えば、ウェイン・ショーターがプレイしている時に、ジャコはコンソールルームにいて、ハービー・ハンコックのピアノの音を少し大きくし数小節分ウェインのヘッドフォンに送り込む、ウェインはそれに反応する。といった感じ・・ジャマイカン・ダブ・ミュージックに似た方法でレコーディングをしたわけですね。
Crisisのサンプル音源
A-2曲目「3 Views Of A Secret」
2曲目の「3 Views Of A Secret」オーケストラによるこの曲、とにかく美しい曲でヴォイシングの妙なのか、なんなのか、不思議な響きがある。この曲はロサンゼルス交響楽団から、31人のストリングスセクションを雇い録音したが、ジャコが気に入らずに「ボツ」にした後に、31人中からさらに7人を抜擢してオーヴァーダブを繰り返し、63人編成のストリングスを作り出した。個人的には、この曲を聴いた時と3曲目の「Liberty City」を聴いた時に、「今まで聴いた事がない感覚だ~」と思いましたね!
3 Views Of A Secretのサンプル音源
A-3曲目「Liberty City」
A-3曲目「Liberty City」!!ビックバンドをバックに、合間を縫う様にして、ジャコのうねるようなベースのフレーズが、心地よく耳に残る。ブラスセクションがループしながら展開して行く様と、不思議な「コード・ヴォイシング」の妙が相まって非常に気持ちいい!!
Liberty Cityのサンプル音源
B-1曲目「Chromatic Fantasy」
B-1曲目「Chromatic Fantasy」バッハの曲です。ジャコの正確無比なパッセージが聴きどころ、この曲を聴いた若いベーシスト達の多くが、その向上心に火をつけた曲でもある。
Chromatic Fantasyのサンプル音源
B-2曲目「Blackbird」
B-2曲目「Blackbird」は、この曲と3曲目「Word Of Mouth」 にはエスニカルな雰囲気も漂う。ジャコの多重人格的音楽性の側面を映し出しています。
Blackbirdのサンプル音源
B-4曲目「John And Mary」
B-4曲目「John And Mary」ジャコが二人の子供に捧げた大作。静寂なイントロから一転してスティールドラムやヴォイス、サックスをちりばめたエスニカルな世界。さらにベースとオーケストレーションが絡み合いながら、感動的なエンディングへと進んでいく様は圧巻!!
John And Maryのサンプル音源
いかがだったでしょうか。ジャコ・パストリアス
最後に「ジャコ・パストリアスの肖像」の一節をご紹介して、今回の特集を終わりにしたいと思います。
~ 9月21日、月曜日の夕刻、とうとうジャコの家族はすべての生命維持装置をはずす決意をした。この時点で彼の呼吸は止まったが、強靭な心臓は奇跡的にもその後3時間も動き続けていた。父親の、ジャック・パストリアスは、こんな時にもけっしてユーモアのセンスを失わず、冗談を飛ばしてこう言った。
「ジャコがいいリズム感を持っているのは知ってたけど、こりゃとんでもないね」
心臓の鼓動が止まるまで、彼は息子を腕の中であやすように揺すり、「ウォッチ・ホワット・ハップンズ」を歌って聴かせていた。
♪ 「誰かに君を信じさせよう。彼の手を差しのべさせよう
君に触れさせよう。そして、何が起こるかみてごらん」♪
では又
今回も閲覧いただき有難うございました。最後に、当店で販売している「ジャコ・パストリアス」のLP盤です!!